なぜ自家製はちみつは美味しいのか ー 養蜂家だけが知っている本当の理由とは?

2018年6月9日

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2011年から始めた養蜂。様々な作業もだいぶ慣れた手つきでこなせる様になってきました。
今シーズンは春の天候不順もあり、初夏の頃は蜂の巣箱の中を見ても、はちみつの貯蔵具合も心細く「今年の春は蜂蜜が収穫できないかな~」と思っていました。

が、その後の追い上げが思いのほかスゴくて、例年よりも遅れたましたが2月上旬に収穫する事ができました。フタを開けて見れば例年並みの収穫量。無事、うちのトーストにはちみつを添える事ができたのでした。

ご近所さんやお世話になったお友達にもお分けして、めちゃめちゃ絶賛してもらって嬉しい限りなんですが、ふと、こんな質問を受けました。

はつさんちのはちみつ、何か入ってます?

確かに独特のコクや風味があるので、これは特別な何かが入っているに違いない、という風に思われるのでしょう。

ですが私からすれば、うちのはちみつに秘密の旨味成分が入っているのではなくて、市販されているはちみつには無くなってしまっているものがいくつもあります。

今回はなぜ自家製はちみつが美味しいのか、その秘密についてお話ししたいと思います。

1.過剰なろ過をしていない

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上の写真は巣枠(フレーム)とそこに貯蔵されたはちみつ。表面は蜜ロウのフタがされているので、専用のナイフでフタを削ぎ、遠心機に入れてはちみつを採ります。

遠心機で集められたはちみつは漉し器(こしき)を通します。うちでは目の粗いザル → 目の細かいザル → 二重にしたチーズクロス(ガーゼ)で漉しています。これで大きな蜜ロウや結晶化したはちみつは取れますが、花粉は通っていきます。花粉は酵素や栄養素を含んでいるので実は体に良いんですよ。

一時期はナイロンの超細かいメッシュを使ってキレイなはちみつを採取する事を考えていました。チーズクロスだと微粒な蜜ロウやプロポリスがろ過し切れず、はちみつが結晶化しやすくなってしまいます。

しかし数百年前の養蜂はスケップ(虚無僧のかぶりものみたいなミツバチの巣)を使い、チーズクロスを使っていて、それで十分だったんですよね。なのでうちでは、この古き良きスタイルを採用する事にしました。

市販のはちみつの場合、機械で圧力をかけつつ極めて目の細かいフィルターを使ってろ過し、はちみつの中に入っているロウプロポリスの微粒はもちろん、花粉取り除かれてしまいます。これにより風味が犠牲になります。

量産はちみつが花粉まで取り除く理由はふたつあります。

はちみつの中に花粉があるとそこが核となり、はちみつの結晶化が始まります。つまりスーパーなどではちみつが透明な状態で陳列できる期間をできるだけ伸ばしたいがために「異物」はすべて除去してしまうのです。

もうひとつの理由は、花粉が取り除かれている蜂蜜は、花粉からその産出国を割り出すことができません。メーカーがちゃんと正しい産出国を表記しているか調べる際ははちみつの中の花粉を調べれば分かるのですが、それを逃れる手法のひとつが花粉除去なのです。

2.はちみつを加熱しない

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量産されているはちみつはほぼ間違いなく加熱されています。はちみつは加熱すると色、香り、風味、そして栄養素や効能も失われてしまいます。

ではなぜ加熱するかというと効率化の一点に要約されます。はちみつは加熱すると、あのネバネバした液体が水のようにサラサラになります。先述の漉す工程や瓶詰めの工程は、はちみつがサラサラしていればしているほど早く完了する事ができます。

つまりは生産の効率化のためだけに加熱されるわけです。

市販されているはちみつでも非加熱( Cold Extracted )と表記されていますので、そういったラベルがあるものがオススメです。

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3.巣枠(フレーム)のロウを交換しない

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シーズンを重ねたフレームの蜜ロウはどうなるのか。みつばち達は空の巣穴には殺菌、消毒のために蜜ロウの表面にプロポリスを塗ります。そこに貯蔵された蜂蜜はうっすらとその風味が着きます。プロポリスは独特な匂いがするので、人によってはあまり好きじゃないのかもしれません。

業者さんによっては、プロポリスで黒ずんできた蜜ロウを交換してしまいますが、うちではずっとそのまま使っています。その方が自然だし、風味も私は好きなのでそのままに。密かにプロポリスの抗菌効果がはちみつにもある事を期待しています。

4.ミツバチに砂糖を与えない

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養蜂の常識として、砂糖水やトウモロコシから作る甘いシロップをミツバチ達に餌として与えます。

なぜミツバチにシロップを与えるかというと、はちみつの収穫量が増えるから、なのですがこれにはマイナスな点もあります。

ミツバチたちは自分たちの食料としてそのシロップを食べるのですが、それ以上の分は巣穴に貯蔵し始めます。つまりはちみつには花の蜜ではなくシロップが混じってしまう恐れがあるわけです。

買ってきたはちみつが妙にシロップに似た味をしていたり、水に簡単に溶ける場合、そのはちみつを作ったミツバチは餌にシロップをもらっていたと勘ぐってよいでしょう。

本来はミツバチ達の食料であるべき分のはちみつまでを人間が取ってしまい、その代わりにシロップを与える、これって何だか変な話だと思いませんか?

うちではそういったシロップは一切あげていません。その分、蜂箱から収穫するはちみつの量を少なめに設定しています。「風の谷のナウシカ」という漫画に出てくる話で、「虫と相談して分けてもらう」という下りがあります。それに似た感覚で、はちみつの収穫量を決めています。なので、他の養蜂家さんたちに比べて採れるはちみつの量は40~60%くらい少ないと思います。

5.巣箱を移動しない


養蜂の業者さんは、咲いている花のエリアとシーズンを追ってトラックに巣箱を載せて移動します。移動する事によって、はちみつの生産量はグンと増えるし、蜜源が限定されるので特定のはちみつ、例えば「れんげはちみつ」とか呼ぶ事ができますし、味にその蜜源の花の特徴が出ます。

かたや、うちの巣箱は全く移動しません。その分、蜜源は近所に咲いている樹木や花からなので、四季折々のバラエティーに富んだ蜜をいろいろ混ぜ合わせる事によって、より深い味わいのはちみつができるんです。シーズン毎にはちみつは風味や色が違いがあり、それも味わう楽しみのひとつなんです。

科学的に調査したわけではありませんが、1種類の花から集めたはちみつよりもたくさんの花の蜜を集めたはちみつの方が栄養素が豊かだと勝手に信じ込んでいます。

6.クスリを使わない

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ミツバチに寄生するダニ。コイツが世界で猛威を振るっています。どれぐらいの勢いかというと、一時期はアメリカの養蜂されているミツバチが半減したほど猛烈な影響が出ています。

最近の報告ではアメリカでは毎年40%のミツバチが死滅しているそうです。(2018年現在)

このダニを退治するために養蜂業者さん達は固形殺虫剤を巣箱の中に設置しました。この殺虫剤はダニだけに効いてミツバチには影響がない、とされているのですが、殺虫剤をミツバチの巣箱の中に入れるという考えは、私にはどうも相容れません。殺虫剤がはちみつに入ってしまう可能性も否定できませんし。

今のところオーストラリアは世界で唯一、この寄生ダニがいません。この殺虫剤のお世話になる必要がないのは、本当にありがたい事なのですが「いずれは寄生ダニもオーストラリアにやってくるだろう」というのが専門家の見解です。なんとも悲しい限りですが、これほどネットワークが発達した世界においては避けて通れない道なのでしょうかね。

まとめ

いかがでしたか?はちみつの味は、ミツバチとはちみつが養蜂家によってどう扱われるかによって本来の美味しさが保たれるか、もしくは損なわれてしまうかが大いに関わってきます。

何でも効率化が押し進められ、見た目も収穫量も大幅にアップしてきたものが多い今日この頃ですが、大切なものを置き忘れてきているのではないでしょうか。私は養蜂をする上で、ミツバチたちに気づきを与えてもらいました。

他の農産物でもいえる事ですが、収穫して食べられる様になるまでには人の手が相当な時間がかかっているわけで、味わっているのは時間そのものなんだな~と改めて思いましたよ。

みなさんがはちみつを選ぶ際、この記事がちょっとでも参考になれば幸いです。以前の記事にも書きましたが、オーストラリアでも海外産のはちみつが入って来ているので注意が必要です。みなさんがスーパーに行った際、棚に陳列されているはちみつはラベルにどんな事が書いてあるのか、原産国はどこなのか、ぜひチェックしてみてくださいね。はちみつは地元で採れた生(raw=非加熱)で非加熱抽出(cold extracted)のものを断然オススメします!

したらね~。

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