砂で出来た島・フレーザー島は時の概念を変える場所
サハラ砂漠が突然海から盛り上がって来て島になった様な、摩訶不思議な島がオーストラリアにはありました。ヌーサから車を約1時間走らせ、フェリーを渡った先にある島、フレーザー島。ここは世界最大の砂の島で、大阪府よりもやや小さいくらいの面積があります。
フレーザー島へ行くのにはバスツアーに申し込みました。ヌーサのビジターセンターで案内員の女性におススメのコースを聞いてそれに参加する事に決定。費用は$180で、他のツアー会社よりちょっと高めでしたが、そのメリットは後に分かる事になります。
バスは横付けでヌーサの宿からピックアップしてくれるので楽ちん、なんですが、朝6時前のスタートでツアーバスに乗り込みます。砂の島に行くだけあって、通常の観光バスとは違う4輪駆動仕様。前後左右に相当傾いていてもへっちゃらなタフなバスでした。
バスはフェリーに乗って、オーストラリア本土から島へ移動します。このフェリーは前後が対照の形になっているので、まるで子供が描いた船がそのまま本当の船になったかのようなデザイン。
バスを運転しているお兄さんがバスガイドを兼任していて、車を走らせながら景色の色々な事を説明してくれます。このお兄さん、フレーザー島で育ったそうで、ガイドしている中に「ここの敷地はうちの親戚のおばさんが住んでる」とか「ここの道は分岐が異様に多くて、昔、酔っ払ってこの道を一晩迷った事がある」といった、正にローカルでないと知らない情報を説明してくれます。私はこういったノリ、好きなので爆笑しながら説明をきいていました。
最初のほうでは単に「おもしろいお兄さんだな~」と思って聞いていましたが、実はすごく博識で、生えている樹木の特性から学術名、島の地質や水の性質などを知っていて、流暢に説明してくれていました。
砂の上に木が生えているのって、よくよく考えると不思議なんですが、説明によれば、最初は砂に草が生え始め、それが死んで次の草の栄養となり、段々と低木が生え、背の高い木が生える様になったんですって。この大木、みんなで手をつないで囲んでみましたが、10名くらいでやっと囲えるくらいの太さ。そんな大木を支えられる程の栄養と有機物が砂の中にあるという事は、何千年、何万年もかけて蓄積されて来たものなのでしょう。樹齢も100年以上ありそうな樹ですが、その足もとから根の下の下は、途方もない年月に支えられているのでした。
マッケンジー湖の水の透明度は凄かった!
このツアーの見どころのひとつ、マッケンジー湖。水の透明感も素晴らしいですが、青のグラデーションも脳が痺れるほどきれいでしたよ。事前にこの湖の画像は見ていましたが、この青は実物を見ないと感じられないものですね~。
砂で出来た島なのに湖が出来るという事は、もしかして海抜が低くて塩水なの?と思ったらさにならず。海抜120m位あるので、この湖の水は雨水だけで出来ています。
子供の頃、砂場で水あそびをした時に、砂が水をすぐに吸ってしまうという体験をした事はありませんか?当然、この島も砂なので砂漠の様になっている場所では水はすぐに吸い込まれてしまいますが、前述の大木が生えていたエリアの様に、この湖一帯は砂に細かな有機物や無機物が含まれ、それが水の流出を阻んでいるのだそうです。
この説明をガイドさんに聞いた時点で、分からない事は何でもこのお兄さんに聞けばいいやと思いましたよ、ホントに。このおかた、びっくりするくらい何でも知っていて、聞いた事に対して的確な答えがスラッと返って来ます。
湖でひと泳ぎしたあとはランチ。冷たくなってしまった手足を、美味しいバーベキューランチ(しかもビールやワインが飲み放題!)を食べて温めてから後半戦に出発です。
海岸沿いを疾走するバス。このツアー会社のバスは他のツアー会社のものより短くできていました。よって搭乗人数が少ないので、サッサッと乗り降りが完了します。各見どころスポットで他のツアーバスとも出くわしましたが、うちらのバスの方が明らかに時間効率が良かったですし、小回りも効いてキビキビ走っていました。
バスの車窓から見える景色。意外と水ぎわの所をかっ飛ばすんですね~。時折りしぶきを上げつつ走るのは乗っていて爽快でした。この浜辺だけでも相当の砂の粒があるんだろうな~と思い、いくつあるのか計算しようかと思いましたが、一匹のししゃもの卵の数を数えるのも挫折した事があるのでヤメておきました。
座礁船マヘノ号
1935年に座礁したマヘノ号。船の後部は既に朽ち果てて無に帰していますが、かろうじて最後部が砂から頭を出しています。鉄のかたまりである船も80年も塩水と雨風にさらされれば、こんなになってしまうんですね。
船の内部はこんな感じ。盛者必衰の理を感じるには十二分でした。私は廃墟ファンではありませんが、そういったものに惹かれる気持ちが少し理解できました。自然だけを見ると、まるで時は流れていないかの様な錯覚に陥りますが、ゆっくりなれど着実に朽ちてゆく船の残骸は時の流れを伝えてくれます。
不変である青空と朽ちてゆく錆びた鉄とのコントラスト。自然が美であるとするならば、さながら人工物は愚醜という立ち位置でしょうか。エアーズロックが土漠の真ん中に突然出現する様に、延々と続く砂浜に突然現れた座礁船の存在がとても不思議に感じられました。
観光用のセスナが停泊しています。何とビーチから離発着するんですね~。しかも滑走路となる浜辺の部分は進入禁止になっている訳でもなく、「飛行機離着陸エリア」と看板があるだけ。なんとも大らかというかいい加減というか。スケールを感じます。
この他にも小川下りや様々な色をした奇岩などを見て回りました。道中、ディンゴ(オーストラリアの野生の犬)も見られましたよ。
帰りもバスごとフェリーに乗り込み、本土へ。帰りのフェリーからはイルカが見えたらしいです。私は見損ねましたが。。。
まとめ
宿に戻る頃にはとっぷりと日も暮れてゆきます。一亥一亥と、空の色が変化してゆき、空を見ているだけでも飽きませんでした。
フレーザー島は自然が美しいので、それだけでも十分楽しめるスポットだと思います。特に悠久の時間を体感したい方、時の概念を変えたい方にはマストな旅先として、ぜひおススメしたいです。
私が参加したツアーはFraser Island Adventure Toursのこちらのツアー。オンラインでも申し込めますが、私は前述したとおり、ヌーサのビジターセンターで申し込みと支払いをしました。