メルボルンでエッシャー & Nendo展 ー ふたつの世界を同時に見抜く目を養おう!
2019年の新年をツイッターしながら迎えたはつ (@hatsu_oz) です。
面白いもので、ツイッターで新年の報告をしている人はニュージーランドを筆頭にオーストラリアから日本へずれていきます。
同じ時間を過ごしているのに、新年は違うタイミングで訪れる。この事実を不思議だなと思いながら深夜12時を過ぎた時計を見ていました。
こういった不思議な体験、ごく最近にしたのが、メルボルンにあるビクトリア国立美術館での展示でした。2018年末から2019年4月まで開催されている特別展示、とても素晴らしかったのでご紹介します。
ESCHER X NENDO展
この特別展示はメルボルン中心街から歩いて5分ほどにあるビクトリア国立美術館で開かれています。展示会のタイトルは
ESCHER X NENDO BETWEEN TWO WORLDS
エッシャーとNENDOスタジオの美術作品展。1粒で2度美味しい展示です!
私は混雑を避けるため、開館する朝10時に行きました。そのおかげか、特別展示には並ばずとも入場できましたがロープで区画されていた行列部分は相当長かったのでそれだけ混むという事でしょう。
この展示には時間の余裕を持って行かれる事をオススメします。
エッシャーって誰?
そもそも、この美術展の「エッシャー X ネンド」って一体何なんだ? と思われたかもしれません。
そこでまずはエッシャーについて説明しましょう。
エッシャーはオランダの画家(版画家)で、有名なのはだまし絵の様な構造物や平面を次々と変化するパターンで埋め尽くした絵画。
上の画像はエッシャーの自画像。エッシャーはリトグラフ(版画の一種)の作品をたくさん輩出しており、この自画像もリトグラフで描かれています。
エッシャーの半生について読んでいて、とても惹かれたのがエッシャーの人生転機のカギは旅だった事。
エッシャーはイタリアを旅行している際に出会った女性と結婚しています。つまり旅先で人生の伴侶を見付けたわけですね。
もうひとつ、エッシャーのターニングポイントとなったのは、スペインのアルハンブラ宮殿を旅行で訪れた事。彼は宮殿のモザイク模様を見て深い感銘を受けます。そしてそれが後に名作を生み出すキッカケとなりました。
ギターの名曲「アルハンブラの思い出」も、このアルハンブラ宮殿が大元になっています。多くの美術家を魅了して止まないこの宮殿、ぜひ行ってみたいですね。
NENDOって何?
Nendoとは、佐藤オオキさんが設立したデザインオフィス。佐藤さんはデザイナー兼建築家。
今回の展示のインスタレーションやアートスペース全体の作成を手がけたそうです。
以前、この美術館での展示で、いくつもの角パイプを使って様々な造形を呈したイスがありました。とてもインパクトがあったのでNENDOの名前はそのときに覚えました。
外側が黒くて内側が白い家。奥に行くに連れ屋根が徐々に開いてゆき、やがて外側だったものが内側に。
こちらはその逆。外側が白い家がいつの間にやら黒い家に変貌しています。
まるでメビウスの輪やクラインの壺のように、はじまりも終わりもなく無限に続いている両側の世界を同時に眺められるというのは不思議な感覚ですね。
エッシャーの作品たち
この作品を見た時、はじめは版画だとは信じられませんでした。あまりにディテールが細かく、かつ色の濃淡も綺麗にでています。
果たしてこの版画を作り上げるのにどれほどの時間を要したのでしょうか。。。
空中に浮かぶ城とそこを目指す少年。ジブリの映画で似たようなものを観た気が。。。
これはエッシャー自身が幼少の頃、父親が読み聞かせてくれた絵本のストーリーを基に作り上げたもの。幼い頃に見聞きしたものはやはりインパクトが残るんですね。
「繰り返し模様」から学ぶパートナーシップとは
展示ではたくさんの「繰り返し模様」の作品が展示されていましたが、私が一番惹かれたのはこの作品。
「出会い」(Encounter)と題されたこの作品の登場人物は二人。だれとでも仲良くしようと左手を挙げている楽観主義者の白、いつも注意を促している悲観主義者の黒、そのふたりが真ん中で出会います。
実はこれ、パートナーシップの話なんじゃないかと思いました。お互いが対極の性格であるかのように見せて、実は隙間も無いようなピッタリの相性だったりするという事の暗喩では?と深読みしてしまいました。
エッシャーのだまし絵
エッシャーの有名なだまし絵の展示もありました。上の写真の作品は階段を無限に登り続ける事ができる回廊。修道士が並んで歩いています。
もし、修道士たちが階段を登るのに疲れたなら、階段を降りてゆく事も可能なんですが、これまた無限に降りるハメになるという。。。
何だか普段の私の生活を描いてあるようで身につまされます。
これまた有名な「滝」。柱が前後している上に水が低いところから高いところへ逆流しています。
エッシャーはどういったきっかけで、一番始めにこういった絵を構想するようになったのか気になります。
神は細部に宿る
今回の展示会でトイレに行った時のこと。鏡には今回の展示モチーフになっている模様が合わせ鏡の両面に施されていました。無限エッシャーの空間がこんなところにまで!
神は細部に宿る、といいますが、トイレでさえアートスペースにしてしまうとは驚かされました。
はつ は こう考えた的まとめ
上の写真は家の形をした小さなステンシルの集合体。違った角度から見れば、また違った模様が見えてきます。
この展示会で見た作品はサブタイトルにある TWO WORLDS の通り、ひとつの作品の中にも2つ以上の世界をみる事ができます。
こういった不思議な感覚をもたらしてくれる芸術品が好きでしたら、全力でオススメします!この展示作品たちに触れることで、新たな世界観を見つけられるかもしれませんよ。
それではまた!
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National Gallery of Victoria (NGV)
Escher X nendo | Between Two Worlds (リンク)
2019年4月7日まで無休
10AM–5PM
フリンダースストリート駅から歩いて6分