1000段階段を登る!ダンデノンの1000ステップスに行ったら天狗の仕業と千利休に出会った、という話
かくいう私もその一人。ちょっと空いた時間があればずっと手付かずになっていた仕事をやっつけ、散らかりっぱなしになっている部屋を片付け。。。そうこうしている間に一日が終わり、「あぁ、なんだか一日があっという間に過ぎてゆく」とか思いながら気絶するように床に就く。そんな日も少なくありません。
そういう日が続くと自分の中でも気持ちがくすぶっているのがわかります。そんなわけで空が晴れ渡った週末、思い切って森林ウォークに出かけてみました。
向かった先はダンデノン丘陵(きゅうりょう)の麓からスタートする道。ここに1,000段の階段がある「1,000steps」があります。
実際に段数を数えてみた事はありませんが、片道約1時間のルート。今回、登る途中で面白い体験をしたのでそれらをお伝えします。
1,000段階段 ー その人気の秘密
この1,000ステップスは地元民にとても人気があります。その理由の一つがメルボルン中心街から車で1時間前後で来られるという事。
駐車場はかなり広いスペースはあるものの、その人気ぶりを反映して埋まっていることが多いです。特に週末であれば場外の駐車場まで車が溢れかえっています。
コースは二通りあります。右側のハードモードは急な階段、左側のハイキングモードは全体として勾配が緩やかになっています。
自分の体力に合わせてコースを選べる、というのは助かりますよね。
この階段は丘陵の中にあり、シダやユーカリが生い茂る森林の中をずんずんと登ると同時に森林浴が楽しめます。
高いユーカリの木が高く茂り日光を遮ってくれるので日差しを直接浴びる割合が低くてすみます。気温的にも午前中に行けば割かと涼しいです。
場所にはよっては水がちょろちょろと流れる音も聞こえて清涼感がありますし、倒れた大木の下をくぐったりして自然の雄大さを満喫できます。
「天狗倒し」に遭遇した!
さて、階段が登り始めて車の喧騒が聞こえなくなり、鳥の木々の音しか聞こえなくなったぐらいの時、近くから突然、メキメキメキ、ズズーンと言う音が聞こえてきました。
その音の大きさと響き具合から大きな木が倒れたのだと想像がつきました。
強い風が吹いているのでも雨が降っているわけでもないのに突然、木が倒れる音だけが聞こえるのは「天狗倒し」という怪現象。明らかな理由もなくて巨木が倒れるのは「天狗の仕業じゃ!」という事なんでしょう。
日本からはるか離れたオーストラリアの地まではるばる天狗さんが出張してくれたのだと思うと感慨深いです。
上の写真は遊歩道をまたいで倒れていた巨木。私が聞いた音はこの木のものでは無いと思われますが、それぐらい近くで聞こえたんですよ!
天狗倒しは四国、長野、埼玉県飯能市で言い伝えられている怪現象。これにメルボルンも追加しましょうかね(笑)。
思わぬところで千利休に拝謁。
階段も後半に差し掛かって、標高もだいぶ上がってきた頃のお話です。
登山道がちょっとしたスペースができていて座れるような場所がある所。そこで外界を見下ろしてみるとなんとも素敵な外界の景色が、ウッソウとした木々が避けるようにしてポッカリと景色が広がっている箇所がありました。ただひとつの問題を除いては。
利休居士、のたまわく。
上の写真がその時のものなのですが、残念なことに、この空間のど真ん中に景色を遮るような巨木。
この景色をの目の当たりにした時、「あ〜、あの巨木がなければとてもいい感じで写真が撮れたのに。」と思わずため息が漏れてしまいました。
その時、私の脳裏にスウゥ〜っと現れたのは茶道の開祖である千利休。そして一言
「不完全だから良いのですよ」
とおっしゃってまたスウゥ〜っと消えていかれました。
確かにこの景色、見方によっては不完全でもあります。しかし、そこからでも美しい景色は望めますし清々しい気分になれる、そんな価値を再発見する事ができました。
この景色を見ながら思い出したのが、日本の「金継ぎ」。欠けたり割れてしまった茶道の茶碗を漆で繋ぎ、金で装飾する事でその不完全さを愛でる、というもの。不完全なものを大切に思う、というのは素晴らしい文化ですよね。
普段の生活の中でも、もっと愛でて良いものが多いはず、そんな事を考えさせられました。
まとめ
上の写真はゴール地点。ここからでさえ開けた外界の景色を拝む事はできませんでした。
それでも登りきった充実感、不思議な体験と気付きがあったおかげで気分がとっても晴れました。
自然が溢れる階段みち、運動がてら歩いてみるのも良いですよ。運が良ければ天狗さんに会えるかも。
それではまた!
場所:1000 Steps, Dandenong Ranges (グーグルマップリンク)
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