旅をしながら開店する「谷村うどん」。味と人柄に触れる事ができるスタイルの出張実演を体験したよ
突然ですが 「うどん」と聞いたらまず何を連想しますか ? 私は元来うどんが好きなので、月並みに たぬきうどんや月見うどんを連想してしまいます。
しかし、ひょんなご縁から旅するうどん屋さんの存在を知り、実際にお会いしてうどんを作るデモンストレーションをして頂く機会に恵まれました。
果たしてうどんはどうやって作るのが一番美味しくなるのか、そして単にうどんを作るだけに留まらず、「旅するうどん屋さん」というスタイルを選択した経緯など多岐に渡ったお話しを聞かせて頂きました。
今回は、旅するうどん屋さんがメルボルンで作ってくれた うどんとそれに込められた思いのお話です。
旅するうどん屋、「谷村うどん」
谷村ジョンさんは旅するうどん屋さん。店舗を持たずに様々な場所でうどんを作り続けています。
現在ワーキングホリデーでオーストラリアに滞在しており、クイーンズランド州、NSW州のシドニーを回ってメルボルンに移動してきたそうです。
ジョンさんのホームページによると、
「転々としながらも、その地に暮らしながら、素敵な人たちと関わること」を最大の楽しみにしています。
とあります。蕎麦やうどんを打つガンコ職人といえば、無口で黙々と働いているイメージがありますが、ジョンさんはその対極を地で行っています.。とってもフレンドリーで話しやすい人でした。
「谷村うどん」のスタイル
ジョンさんのうどん屋さんは、招待を受けて訪れた先がうどん屋さんになります。
この日も、ちゃんと看板を掲げ、「店内」の音楽セレクションはヒップホップ。お客さんに合わせて音楽をチョイスするとの事。そういった心意気がニクいですね。
そしてうどんを作るデモンストレーションをしながらうどん作りの説明をしてくれます。 うどんにまつわる話は多岐に渡り、興味深く聞かせてもらったのですが、すごいなと感心したのは「移動するうどん屋さん」は、毎回異なる環境で調理しつつも、うどんの質を安定させて作る事。確かに訪れた先によってテーブルの大きさや高さ、コンロ台の火力や数も違うでしょうに、それは大変だな~と思います。
私も仕事柄、色んなパソコンのキーボードに触れますが、文字の配置は同じでもキーの幅や押した感じが違うだけでも作業スピードが落ちてしまうので、キッチンが毎回違うというのは相当なチャレンジだろうなとうかがわれます。
麺の大敵は「肌荒れ」 !?
麺を作る作業において、麺自体の「肌荒れ」を防ぐように心がけているそうです。
この場合の肌荒れというのは、麺の表面のツルツル具合が失われて食感が落ちた状態をいうのだそうです。肌荒れするのは熟成時間や、加水率、茹でる湯のPh(酸性とかアルカリ性)具合によるものだそうで。なるほど、全ての工程で気が抜けないんですね。
確かに伸ばした生地は、まるで素肌のように滑らか。スベスベマンジュウガニもビックリするぐらい、すべすべなんですよ!
均等な切り幅にするのは理由がある
切る時は麺線を揃えて、幅を均等に切るそうです。麺幅が変わると茹でた時間が同じでも、麺の食感にばらつきが出るから。こんなところにも味を一定に保つ技術が隠されているですね。
私は東京育ちでうどんの断面は楕円だという認識で育ちましたが、手打ちにしたうどんの断面は正方形に近い事を知りました。
「いったんもめん」は幸運のしるし
うどん作りに使われるのは、オーストラリアのスーパーで販売されている一般的な小麦粉。実はこれ、うどんを作るのに適しているそうです。
伸ばした生地を切っていくと、上の写真に写っているような端っこの部分は不揃いになってしまいます。この部分は形状が妖怪の「いったんもめん」に似ていることから、ズバリ「いったんもめん」と呼ばれていて、もしうどんに入っていたらその人はラッキーなんだそうです。まるで緑茶に入っている茶柱みたいですね。
今まで意識して食べていた事は無いですが、手打ちうどんを食べた際には「いったんもめん」を探してみましょうね。
うどんの付け合わせ
ジョンさんは あらかじめ揚げ玉、鰹節、白ゴマ、刻み海苔を持ってきてくれていました。
更に追加で自然薯とろろ、姫ゆず、うずらの卵、そして煎りたてのゴマも揃えてうどんを待ち構えます。ゴマを炒ったりゆずを刻むと、それだけで良い香りが広がるのでうどんへの期待感がおのずと高まってしまいますよね。
うどんはたっぷりのお湯で茹でる
うどんを茹でる時間は10分間。たっぷりのお湯でグツグツとお沸かして茹でます。この段階からうどんのツヤツヤ加減が見えるので食欲がそそられるんですよ、これが。
湯気がモウモウとあがり、キッチンにはうどんの良い香りが充満していきます。
冷水でさらす
10分間茹でた後、冷水で「しめ」ます。こうする事によって表面のぬめりを落としつつ、麺にコシとツヤが出るそうです。
麺を切断した角がシッカリと残っている事を「エッジが立っている」と言うそうです。確かに市販のうどんに比べたら相当エッジが立っているのが、上の写真からも見てとれますね。
完成!「とろ玉ぶっかけ谷村うどん」
付け合わせを盛り付けて、「とろ玉ぶっかけ谷村うどん」のできあがり!盛り付けが完成するやいなや皆で食べ始めました。
それまでみんなで賑やかに話しながら準備を進めていたのに、いきなりシ~ンと静寂。そのかわり食べるのに大忙し、頭の中では「ウマイ、ウマイ」の大合唱。うどんの歯ごたえ、食感、喉越しが三拍子揃って素晴らしい!
香川の人は「のどに当てて」うどんを食べ、「喉でかみ切る」という話をジョンさんに聞いたのでマネしてみようかと思いつつも目の前のうどんを食べる方に集中。他の事を忘れてしまうほどおいしい! あっという間に平らげてしまいました。
冷水でしめたぶっかけうどんの次は、アツアツのうどんの登場です!
シンプルなのに激ウマ!「釜玉谷村うどん」
実は私、釜玉 (かまたま) うどんの存在を知りませんでした。
どういったものかというと、熱いうどんに生卵を入れて生醤油をポトポトと垂らしかき混ぜて頂きます。うどんがアツアツなので卵が半熟状態になり、絡めたうどんはうっすらとした甘みが感じられます。
まるで卵かけご飯のような、慣れ親しんだ味。それでいてツルッとしたうどんが、これまた良いハーモニーを奏でてくれます。こんなシンプルなうどんなのにめっちゃ美味しい!逆をいえばシンプルだからこそ奥が深いのかもしれませんね。
半熟玉子やスクランブルエッグ、フレンチトースト、オムレツといった類いの料理が好きな人には、もうタマらない一品です!
まとめ
楽しく話して美味しく頂く。ただ食べる、というよりは体験型の食事でしたよ。
今回、谷村うどんのうどんを食べた事によって、ジョンさんの人柄と彼の情熱にも触れる事ができました。
ジョンさんと話していて、実はふたつの点において凄いなと感心していたんです。その二つとは;
1.掛け合わせる力
ジョンさん曰く「日本だったらうどんを打っている人はゴマンといるけれども、外国に行って移動しながらうどんを打っている人はいない」。まさに希少価値。私が感じたジョンさんの掛け合わせる力は;
うどん×英語力×実演パフォーマンス×軽快なトーク
の相乗効果。これらを要素を1つ2つ持っている人はいても、これら全てと掛け合わせられる人はジョンさん以外、滅多にいないでしょう。
2.料理の先端をゆくスタイル
日本の天ぷらやお寿司屋さんのカウンター、デザートパティスリーのトシ・ヨロイズカ(ミッドタウン店)、メルボルンではコーヒーのフォース・ウェーブに先鞭をつけたカフェ、Auty Pegs、そして今回の「谷村うどん」。
これら全てに共通しているのが、「お客さんの目の前で調理しつつ、お客さんと楽しいコミュニケーションをとり、できたての料理を提供する事」。
考えてみれば、うどん屋さんというジャンルで目の前で料理が作られるというスタイルは聞いた事がありません。ジョンさんが、正に草分け的なのではないでしょうか。案外、今後のうどんワールドにおいてこのスタイルが広がるかもしれませんね。
料理って作った人によって味がかわってくると思いませんか?だれが作ったか分からない料理と目の前で心を込めて作ってくれる料理、どちらが美味しく感じるかといえば答えは言わずもがな、ですね。
ジョンさんのホームページには;
こんなしがない旅するうどん職人がいたということで、誰かしらの記憶に残ったり、インスピレーションになったりしたら、それもまた最高やわとも思います
とありますが、確実に私の記憶には残りましたよ(笑)。
ジョンさんのうどんを食べてみたい方!朗報です!
メルボルンでの滞在は1ヶ月間くらいだそうなので、その期間にジョンさんのうどんを食べてみたい!という人はぜひジョンさんにコンタクトを取ってみて下さい。ある程度人数が集まれば出張実演するそうです。
そして交通費を出してくれるのであれば、「どこにでも」赴くそうなので他の州や国であってもオッケーだそうですよ!
ジョンさんの略歴とプロフィールはこちらから。
【ジョンさんのホームページ】 旅するうどん屋のうんたらかんたら
【Facebookページ】 旅するうどん店「谷村うどん」
最後にうどんの魅力と、味わい深い話を聞かせてくれたジョンさん、素敵な時間を有難うございました!
それではまた!
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